けんすう(以下、同) 知っている名前がたくさん出てきて、とても面白かったですね。私は、2014年のリリース時ぐらいのときの話はあんまり知らなかったので、籾山さん(※籾山悠太。「ジャンプ+」現編集長)ってこう考えていたのかとか、細野さん(※細野修平。「ジャンプ+」前編集長)や林さん(※林士平。「ジャンプ+」編集者)の話とか、『SPY×FAMILY』がどのようにして生まれヒットしたのか、とか、あのあたりは本当に興味深く読みました。
(略)
「傑作ができればいい、以上!」という狂気
――『王者の挑戦』では、「ジャンプ+」立ち上げ時の中心人物・細野さんと籾山さんのバディのような関係も描かれています。けんすうさんから見たおふたりの印象を聞かせてください。
細野さんは、挑戦へのハードルがとにかく低いんですよね。こちらから提案しておいて言うのも難ですけど、「えっ、そんなリスク取るの?」と思うことが多々ありました(笑)。
「ジャンプ」という強大なブランドを背負い、しかも「ジャンプ+」はデジタルでも成功している。業界内で「ジャンプ+」以外は厳しい、とも言われる中で、一番挑戦しているというのは、ちょっと頭がおかしいなって思うくらい。
じゃあ、籾山さんがブレーキ役やりますとかじゃなくて、籾山さんは違う分野でそれ以上に攻めてる。だから編集部全体がバグってるんですよね(笑)。
――「ジャンプ+」編集部の組織文化は、他の業界やスタートアップ企業と比較してどう映りますか?
「面白いマンガが作れればいい」という一点への集中力が凄まじいです。他の業界の人も表向きにはそう言うけど、実際には、社会人としての調整や配慮が3割くらい入るものです。けど、「ジャンプ+」の人たちは違う。「傑作ができればいい、以上!」と本気で思っていて、その軸でみんなが成り立っているっていう狂気。まるで少人数の志高い人たちが集まったスタートアップのような組織運営を、歴史ある企業内でやっているんです。
――編集長だけでなく、編集者一人ひとりにもそういった気概を感じると?
そうですね。編集長だけがそうだというのは100歩譲って理解できますが、編集者たちもみんな独立心が強く、まるで一人ひとりが“社長”のような意識を持っています。それがとても面白いなと感じています。
――なるほど。たしかに『王者の挑戦』でも、編集者それぞれが強い意志と判断基準で動いている様子が描かれています。また書籍内で籾山さんは外部のパートナーに対しても「編集者として振る舞う」とおっしゃっていますが、けんすうさんは、彼らと仕事をして、ムチャなことを言われたという経験はありますか。
「ムチャ言うなぁ」はないんですけど、「ムチャするなぁ」と思うことはあります。明らかに忙しいのにレスポンスは速いし、ほかなら門前払いされそうな依頼にもちゃんと対応してくれる。企業とは思えないスピード感で、新しいことにもどんどん挑戦するんです。
たとえば細野さんと「翻訳をベースにしたグローバルなジャンプ+のコミュニティをやろう」と話すと、即OK。世界の誰もやっていないことを迷わず選ぶ、その思い切りがすごいです。
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Source: 超マンガ速報